『第3回』ミノルタ/ハイマチックシリーズ Minolta Hi-matic series |
1960年代の高度成長期以降に日本製のカメラが世界を席巻することになります。ドイツのライカ、コンタックスから、日本のニコン、キャノンが世界のトップメーカーになりました。1961年キャノンはキャノネットというカメラを発表、当時の価格が18000円という値段と露出合わせが不要のEE(=Electric
Eye)機構で大ヒットになったそうです。2003年発売のキスデジと同じで、キャノンはこういう手法が得意ですね。ちなみに、1960年の大卒公務員初任給はおよそ20000円、1970年はおよそ40000円でした。大衆向けとはいっても、ほとんど初任給と同じぐらいということで、やはりカメラは高級品であったのでしょう。
他のメーカーもそれに対抗して大衆向けカメラを開発して大量生産するようになり、ミノルタもハイマチックシリーズを発売しました。このハイマチックシリーズを一躍有名にしたエピソードが、1962年、グレン中佐が搭乗したアメリカの人間衛星船『フレンドシップ7号』の宇宙飛行用カメラに採用されたこと。これで宇宙にいったカメラとして有名になり、その後20年間にわたってハイマチックシリーズは生み出されました。ここでは、1970年前後に発売されたレンジファンダーを内蔵した2機種を紹介します。
【ミノルタ/ハイマチック11 Minolta Hi-matic 11】
発売年 1969年
発売時価格 25000円
生産台数 ?台
レンズ ROKKOR-PF 45mm/F1.7
シャッター Seiko-ALA (B、1/8〜1/500秒)
初代ハイマチックの流れを組む大柄なボディーに大口径F1.7のロッコールレンズを搭載したタイプ。手に取った第一印象は「でかい」。あまり売れなかったようで、これを最後にハイマチックシリーズは小型でシンプルなカメラに変わっていきます。最後のレンズシャッター式カメラの高級機と言えるこのハイマチック11。ファインダーはブライトフレーム式で,パララクスも補正されて、ファインダー内シャッター速度と絞り値表示されます。露出はプログラムオートとシャッター速度優先オート。ついでに、フラッシュの撮影距離に応じて絞りを自動的に変えるフラッシュマチック機構も付いています。まさに至れり尽くせり。また、CLC方式分割測光を採用したのも特徴的です。レリーズ半押しでAEロックがかかるので、マニュアルモードが無いのですが
適当な絞り値でロックすればマニュアルカメラのように使えます。
ROKKOR-PF 45mmというレンズは5群6枚構成で、フィルター径55mmの大きなレンズです。レンズのすぐ上にある小さなレンズが露出用のレンズで、フィルターを装着した場合に露出倍数を計算する必要がなくなりました。CLC方式分割測光を表す「CLC」という表記が誇らし気です。
レンズ鏡筒には、ピントリングとシャッター速度を設定するリング以外に、いろいろな設定をする小さなレバーがたくさんあります。一番レンズの先端にあるのが、シャッター速度を設定するリング(写真では1/8にあっています)、その内側にフラッシュマチック用のガイドナンバー、フィルム感度、セルフタイマーをセットする小さなレバーがあります。フィルム感度の上限がASA500なのが残念。その内側はピントリングで、メートルとフィートがわざわざ別に書いてあります。
このカメラの写りですが、期待に違わず優秀です。室内の白熱灯下、絞り開放に近いところで撮るとちょっと甘めで味わいのある写真が出来上がりました。手ブレに気を付けてゆっくりとシャッターを押すと、手持ちでも大丈夫でした。天気のいい屋外で絞りこむと、ぐぐっとシャープになります。弱点は逆光ですね。ピカピカの美しい鏡筒ですが、逆にそれが仇となってしまうようです。露出計も全然頼りになりません。逆光の場合は、一度順光側でAEロックして、無理矢理なマニュアル露出で撮ってあげるといいと思います。
【ミノルタ/ハイマチックE Minolta Hi-matic E】
発売年 1971年
発売時価格 28000円
レンズ ROKKOR-QF 40mm/F1.7
シャッター Seiko-ESP (2〜1/1000秒)
このハイマチックEは二重像一致式の距離計を内蔵して、露出制御はプログラムオートのみというシンプルなタイプになりました。さらに小型のF2.8レンズを搭載したハイマチックFとともに、大ヒット商品となったそうです。ファインダーはブライトフレーム式で,パララクスも補正されるものの、ファインダー内に絞り値やシャッター速度の表示は一切ありません。ただ、緑のランプと赤のランプが点灯して、シャッター速度が遅い場合には手ブレの警告をするようになっています。レンズはROKKOR-QF
40mm/F1.7に変更されてました。
まずは大きさの比較。左側がハイマチック11、右側がハイマチックE。レンズのサイズも含めてかなり小さくなりました。重量も軽くなり、約740gから約540gに。やっと“コンパクト”カメラになったかな。巻き上げのレバーにプラスチックのカバーが付いたり、巻き上げ角度が小さくなるなどの細かな改良もされています。
ROKKOR-QF 40mmというレンズは4群6枚構成で、ライツ・ミノルタCL用のMロッコール40mmF2とよく比較されます。同じレンズという説もありますが、Mマウントは当然のごとく非常に高価で私には手が出ませんにで真偽は分かりません。フィルター経は49mm。一度、鏡筒が外れるという事故がありました。レンズ正面の銀色のリングを外して分解し、レンズ鏡筒内の緩んでいたネジを締め直してなんとか復活しました。
上から見ると、赤いランプが特徴的です。LEDではなく電球です。(笑)バッテリーチェックをかねているようで、シャッター半押しで点灯します。一番レンズの先端にあるのが、フィルム感度を設定するリングで、内側がピントリング。かなりシンプルになりました。オートのみにも関わらず、露出計はなかなか優秀です。
裏面にはフラッシュのAUTOとMANUALの切り替えレバーがあり日中シンクロを可能にしています。また裏蓋にはフラッシュマチック用にストロボのGNを設定するための表があるのですが、よく分かりません。
このカメラの写りですが、当然ながら優秀です。ライカレンズと比べられているのは伊達ではありません。どちらかというと、ハイコントラストで濃厚な描写をします。背景のボケもきれいです。赤や緑なのどの原色が強調されるような感じです。特筆することは、シャッターの感触が独特。なんか“グシュー”といった感触が微妙な感触です(笑)
本当にいいカメラだと思いますが、電気系統が壊れてしまうと直しようがないのが残念です。
【関連するHP】
コニカミノルタ「OLD & NEW」 ミノルタは2003年10月にコニカと合併してコニカミノルタになりました。ミノルタとコニカの歴代カメラに関する詳細なコーナーがあります。
Range Finder ビュッカーさんのHP。国産RF機のすばらしいコレクションとレストア情報があります。とにかく量も質も凄いです。修理に挑戦したときには参考にさせていただきました。